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左手には同じ形の家が一直線に並び、右手には桜並木が立っている。
中学生の僕はそこを自転車でかける。
春の香りを胸いっぱいに吸い込み、風を肌で感じる。
白い壁に赤茶色の屋根。窓はみんな同じところにあり、どれもこれも同じ家。
僕はこの建売住宅の整然と並んだ様が好きだ。
ところどころに個性はあるものの、大きく形は変わらないので風景が乱れるような余計なものはない。おかげで隣の桜が映える。
それに、まっすぐでほんのわずか坂道になっているこの道は僕の自転車を静かに運んでくれる。
僕はただただ、この場に集中できる。
けれど、桜の花はほとんど見ない。
それを言うと、僕が何事も話す近所のお兄ちゃんは「変なの」と言って笑う。
いいんだ。僕はここで花びらを顔に浴びるのが好きなんだから。
強い風が吹いて、桜が一気に散った。
周りに人がいないことを確認して、僕はほんのわずか目を閉じる。
そして、顔に全神経を集中させる。
1枚…2枚…3枚…
撫でるような。くすぐるような。
ほんのわずかな触れ合いが僕を幸せな気持ちにさせていく。
僕は安全のために、少しだけ、うっすらと目を開けた。
すると、ひと際大きな花びらが目の前に迫っていた。
「ぶふ!」
それは花びらではなかった。
突如としてぶつかり、僕の顔にはりついたものを慌ててはぎ取る。
間一髪で自転車のバランスを持ち直し、足をついた僕はそれを急いで確認する。
僕はわが目を疑った。
それは――――美しいパンツだった。
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