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転がり込むように家の中に入ると、リビングから母が顔を出した。
「なによ、あんたそんなに慌てて」
「べ、べつに、なんでもないよ」
「はいはい。どうせ碌なこと考えてないんでしょ」
「う、うるさいなー!ほっといてよ」
僕は足を引っかけながら、ドタドタと階段を上った。
自分の部屋のドアを勢いよく閉めて、鍵をかけるとようやく一息つけた。
ドアを背につけて、ずるずると座り込んでしまう。
しかし、ほっとしたのもつかの間。
鞄の中から呼ばれている気がして、僕は慌てて鞄の中に手を突っ込んだ。
はろー。
出てきたのは、ピンク色の小さなパンツ。
恥骨にあたる部分は透けたレースで、恥部と臀部は肌触りのいいシルク。
両端にはかわいらしいリボンがあしらわれている。
僕のトランクスの1/3ほどの布もない。
浅くてなかなか、際どいデザインだ。
弟しかいない僕は、こんなパンツを目の前にしたことはない。
母は「はは」でしかないし、色気もへったくれもないものを履いている。
見れば見るほど、指先が震えてくる。
目が離せなくなる。
まるで魔力をもった指輪のように引き寄せられていく。
―――返そう。
ギリギリ我に返り、元落ちてきた場所に戻す決心をした僕は、さっそく家をでた。
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