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◇◇◇◇◇
ファミレスに行くと下田くんは既に壁際の席に座ってハンバーグセットを食べていた。
前後と横の席は会社員だろうスーツの男性が数人座っているので、ジャージの下田くんは浮いていた。開店したばかりだからかお客さんは下田くんの周りにしか座っていない。
「また地味な服に戻ってんじゃん。優磨とケンカでもしたの?」
「…………」
下田くんの言葉を無視して向かいに座る。
この人はまだ会社に在籍していて副業もしているのに、いつも暇そうに見えてしまうのはどうしてだろう。私に頻繁に連絡してくる時間を無理矢理作っているのだろうか。
「波瑠は何食べるの?」
「いらない。すぐに帰るから」
「つれないねぇ」
ニヤつく下田くんに飲み物をかけたい衝動に駆られる。
無理矢理キスされたことを忘れていない。そのせいで優磨くんと別れることになったのだから。
今も下田くんと会うのは怖い。でもここは人目があるし、本当に今日で最後にするつもりだ。
「金は?」
「持ってきてない」
「は?」
「優磨くんと別れたから会社に言っても意味ないよ」
「へー、優磨が波瑠を手放したんだ」
下田くんは面白そうな顔をしてハンバーグを頬張る。
「だからもう下田くんとも会わない。今日はそれを面と向かって言いに来た」
私の言葉に驚いた顔で口をぽかんと開ける。
「私、下田くんのせいで最低な状況なの。優磨くんに誤解されて傷つけちゃった。下田くんのことを一生許さないよ。もう二度と私に連絡しないで」
「ちょっ……いいのかよ? 俺はこれからもずっと波瑠の行く先々で不倫の過去を言いふらすよ」
「いいわけないだろ」
突然割って入ってきた声に私も下田くんも顔を向け固まった。
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