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下田くんと私は警備会社の社員さんたちの迫力に言葉を失う。全員格闘技の経験がありそうなほど体格がいい。
「俺も多少武道の心得があるし下田が襲ってきても大丈夫って思ったんだけど、泉さんが手配してくれたんだ。結果正解だったね。フォークとはいえ武器を持っちゃったし。さすがの判断です泉さん」
「恐れ入ります」
優磨くんのそばに立つ泉さんは微笑んだ。
「なっ……」
下田くんは何人もの男性に囲まれて完全に怯えている。
「二度と波瑠に関わるな。この先また下田が波瑠を苦しめたら、俺の持ってる力の全てを使って人生を潰す」
下田くんは小さく震えている。私までも鳥肌が立った。優磨くんは本気だ。
「波瑠から脅し取った金はきちんと全額返してね。あとで口座連絡するから」
慌てて何度も頷く。このままでは下田くんの首が痛くなってしまうんじゃないかと心配になるほどに。
「最後に、波瑠に何か言うことがあるんじゃないの?」
顔を真っ赤にして私と向き合った下田くんは「申し訳ありませんでした」と頭を下げた。
私は返事をすることもなく言葉を失う。体調を崩すほどに苦しめられた相手がこんなにあっさりと謝罪したことに戸惑う。
「波瑠に……離れられるのが怖くて……俺、まだ波瑠のこと……」
「下田、潰されたいの?」
優磨くんは低い声で下田くんを制した。
「っ……」
「もう関わらないって自分の口できちんと言って」
優磨くんの言葉に震えながら「二度と関わりません」と口に出す。
「波瑠」
名を呼ばれて優磨くんを見た。
「これでいいかな?」
「え?」
「下田をどうしたい? 警察に連れていく?」
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