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ファイルのページをめくるたびに更に驚いた。下田くんの生い立ちや人間関係、家族のことや不倫がバレてからの行動全てが詳細に書かれている。
これによると下田くんは金銭的に生活に余裕はないけれど、私に集るほど困っているわけでもなさそうだ。借金があるって言ってたけれど実際には奥さんの奨学金のみだ。奥さんの父親は確かに城藤と取引のある企業に勤めているようだ。
「どうしてここまでしてくれたの?」
「調べてくれたのは泉さんだ」
「え?」
「俺がいないところで泉さんと会ったんでしょ? その時波瑠が怯えた様子になったのが気になって俺に教えてくれた。それで泉さんに下田を調べてもらった」
カフェで下田くんのメッセージを見た時だ。あの一瞬で泉さんは私の何かが変だと気づいたのか。なんて有能なのだ。
「あとは姉さんも」
「美麗さん?」
「波瑠が下田にお金を要求されてるんじゃないかって心配してた。酔ってた記憶だから確かじゃないってことだったんだけど」
マンションに泊まりに来た時の電話のことを、酔っていても美麗さんは覚えていたのだ。
「波瑠のことを疑ってごめん。もっと早く気づいていたら不安にさせることはなかったのに」
「…………」
今更そんなことを言うなんてずるい。話したいときには聞いてくれなかったのに。
優磨くんの熱を込めた視線に耐えられなくて話題を変えた。
「なんで下田くん、私を脅したんだろう。お金は必要なさそうなのに……」
「波瑠に会うためだよ」
「え?」
「下田はまだ波瑠が好きだから、お金を口実にして連絡を取るのが目的。たとえ憎悪でも波瑠の中に少しでも下田への思いがあればよかったんだと思う。波瑠を苦しめるのは分かってても、そうしてしまう」
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