第三話 恋にのぼせて頭パーン

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  ◇ ◇ ◇  その後、午後の部。 『ヒン……ヒンヒン……』  ニューイは、べそをかいていた。  あらゆるトラップや謎生命体の攻撃、中ボスなどをのしまくって、九蔵とニューイは無事ラスボスがいる最上階までやってきたのだ。  しかし最上階にあったのは、巨大な液晶画面とコントローラー。  画面に映るのは口から火を吐く大亀。大亀の背後にあるスイッチ。塞がれた退路。舞台はマグマの上にかかる頼りない橋のみ。  そう。全てがあのフィールドだ。  子どもの頃に遊んだゲームのラス面と、なんら変わりはない。  ニューイも知らないうちに、なぜかラスボスとのバトルはリアルゲームと化していたのである。  それも、かなり難しく。  悪魔的には物理的に戦うほうが楽だ。  機械を扱うほうが苦手な悪魔たちに向けて、難易度がアップしたらしい。  おかげでニューイは苦手な機械をどうにか操り、もう何度も何度も残機を減らしながらチャレンジを繰り返していた。 『ぐすん……せっかくプロポーズ大作戦をリベンジする権利を得たのに、ピコピコに負けるわけにはいかないぞ……!』  ゲームをピコピコと呼んだ時点で、負けは見えている。  けれどニューイはめげずに奮い立ち、コントローラーを握った。 「うわっ」 『なぁぁ……っ!』  が。開始直後、即死する。  三秒くらいしかもっていない。 『ぐぬぬ……っも、もう一回! もう一回なの、あぁぁぁ!』 「あ、あ〜……」  九十九も用意されていた残機は、もうとっくに半分以下まで減っていた。 『まだまだ……っ』 「おぉ……」  九蔵は一歩下がったところで奮闘するニューイを見守り、眉を下げて拳を握る。  ニューイがクリアすると、九蔵はニューイからプロポーズを受けることになるだろう。だが、その時の返事はまだ考えていない。……考えたくない。  かといって止めようとも思えなかったので、九蔵はただ見守ることしかできないのだ。 「おぉ、おっ、お」 『うぬぬっ……! たくさんの火を吐かれると、私は死んでしまう……!』 「あ、あぁっ」 『あぁぁぁっ!』  デレッテテレッテテン、と流れ作業のごとくスムーズに死した配管工。  ニューイのやや後ろでハラハラと言葉にならない声をあげた。応援したいがしたくないので奇声を発してしまう。 『なぜっ……うう、むつかしい……でも、も、もう一回なのだよっ』  めそめそと泣きながらコントローラーを離さないニューイは、すっかり悪魔姿だ。姿が戻るということは、感情が昂って不安定だということ。ニューイは必死だった。 (そんなに、イチルの魂をつなぎ止めてぇのかよ……バカ)  ──ここにいるのは俺だ。  にぎりしめた拳が、震える。 「もう、諦めてもいいんじゃねーか?」 『ぬっ!?』  胸に嫌な汚れが湧き、気がつけば九蔵はそんなことを言っていた。 『ど、どうしてだいっ?』  着地に失敗してクッペ様を踏んでしまい死んだニューイが、コントローラーを握ったままカラコロンと振り向く。
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