第三.五話 酒に溺れて頭パーン

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 指の関節にセクハラをされる九蔵は、酔った脳で必死に考え、ズーズィたちへ助けを求める。首を横に振られる。なんてこったい。 「ズーズィ」 「うぃ」 「よく見てろよ」  ニューイはパチン! と指を鳴らしてテーブルの下から黒く細い腕を何本も伸ばし、ズーズィの体にまきつけた。  ズーズィの逃げ場をなくし、膝に抱える九蔵の口の中には指を入れて言葉を奪う。  ニューイの手は、そのまま九蔵の尾てい骨あたりをスルリと擦った。 「っふ……ひゅ、うぃ……」 「いや、九蔵がな? 俺が悪い子だって言うんだよ。ケド、俺は他にもっと悪い子がいると思うんだよな。ズーズィはどう思う?」 「え、それこの状況で聞いちゃう……? クーにゃんって言わなきゃお前ボクの首の骨とか折るじゃん?」 「さぁ? 俺は誰とは言ってねぇだろ? それに、いくらでも悩んでくれて構わねぇぜ」 「あ、ぅぁ、あ」 「九蔵の魂のそばをすこーしなでて、オマエの答えを待っててやる。こうやって、優しく弄ってやりながら」 「っらぇ、っ言って、ず、ずぃ……っ」 「めっちゃ楽しい遊びして待ってるじゃんいいなぁぁぁ……!」 「ズーズィィ〜? それともオマエが、悪い子は自分だと名乗り出てくれんの?」 「クーにゃんが悪い子ちゃん」  ズーズィが九蔵を売ると、ニューイはニコリと笑い、ズーズィに絡みついていた腕でズーズィの頬をなでてから解放した。  ニューイの指が九蔵の中から抜ける。  とはいえ感じた声を聞かせたのは事実で、九蔵はニューイの胸に顔を埋めて小さくなった。 「よしよし。甘えん坊だな、九蔵」 「ぁ……はひ……」 「いい子だぜ……ふ。顔を上げろ。オマエの大好きな酒を飲ませてやる」  柔らかな命令に顔を上げると、フワリと浮かんだグラスから水飴のように中身が浮遊し、唇の隙間からトロリと流れ込む。  酒は美味しいものの、アルコールと羞恥心で頭がクラクラした。  死ぬほど恥ずかしい。  九蔵が恥ずかしいから、ズーズィに見せていたのだ。ニューイの意地悪である。  続いてニューイは気配を殺している澄央に黒い腕をのばし、艶めかしく首筋を晒して小首を傾げた。 「真木茄 澄央ォ〜……?」 「ココさんが悪い子ス」 「だ、そうだ」 「なぁすぅぅバカですかぁ……っ」  産地直送。完売御礼。  先輩を悪魔に売り渡すことになんの躊躇もない澄央に、九蔵は情けない声で罵倒した。  末っ子気質というか、マイペースで甘え上手な澄央が恨めしい。  黒い腕で澄央の頬をなでたニューイは、ご褒美に中央で煮えていたもつ鍋をフワフワよそい、白米と共に澄央の前に配置した。  澄央はこれにより、完全にニューイ側だ。真顔でモリモリ頬張っている。薄情者め! 「さぁて、九蔵」 「ん、む」  ニコニコと笑顔のニューイは、九蔵の顎を指で持ち上げ、チュ、と九蔵の頬にキスをする。 「悪い子は誰だって?」 「う……やだよぉ、もう……」 「嫌? なら、もう少し犯人探しをすることになるなぁ。尋ねる人間なら、外に出ればどこにでもいる。問題ねぇさ」 「っお、俺だから、それしねぇで」 「それ? あぁ、意味わかんねぇ。わからない言葉は聞こえないのと同じだと思うけど、九蔵はどう思う?」 「俺……俺が、悪い子……です」 「ククク……グッボーイ」  熟れたトマトと化した九蔵が甘えた声で認めると、ニューイは途端にとろけるようなほほ笑みを浮かべ、今度はきちんと唇へキスをおくった。  ズルいキス。  酔いどれ対決は、九蔵の完敗だ。
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