第二話 気になるモテ期

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 その日の夜。 「と、ということで、私もスマートフォンが欲しいのだ」 「ぁんっ」  ベッドの上で行う恒例の餌やりタイムの最中、九蔵は顔のいい子犬からキューンとオネダリを受けていた。  ちなみになぜ今なのかというツッコミは早々と入れたのでなしだ。  ニューイ曰く〝九蔵は食事の時間なら本音を隠さない上にいろいろと寛容だ〟ということらしい。  大正解だが、こちとら一物をさらけ出している。ニューイの手も内側に入ったままで動くと気持ちよくなりかねない。  ニューイはちょこちょこと餌やりタイムに言いにくい話を振っては、叱られたくないのでうやむやにする悪魔らしい悪事を働くのだ。  今夜も九蔵の気分がノってきたあたりでそういう流れに持ち込まれ、まんまと話を聞かされていた。 「はっ……で……ナスがマインの連絡先を交換しようって言ったから、お前も欲しい、って?」 「う、うむ。もちろん九蔵ともマインというのをしたいぞ? それに一番は、むへっ……九蔵の写真を撮って、いつでも眺められるようにするのだよ」 「っぐぅんっ」  変な声が出た。視線が恥ずかしいという観点からカーテンを閉めた暗い部屋だが、実に眩しい。 (くっニューイ……笑顔一つでフリーターの薄い財布の紐をほどこうとは、おそろしい子だぜ……っ) 「い……いいのがあったら買ってきてやるよ……」 「! く、九蔵っ、九蔵ぉぉ……っ!」 「はぁっ、はい。もうわかったから早く手ぇ動かしてくださいね……萎えちまったらお預けだぞ?」 「それは困るっ」  頬が熱くなるのを感じながら了承し、九蔵ははしゃぐニューイの肩にくて、と額を預けた。  最近この恥ずかしい給餌を我慢する代わりに、餌で悪魔を操るという方法を覚えた。  諸刃の剣だが、効果は絶大。  九蔵の言うことはなんでも聞くニューイだが、無自覚の甘い言葉や詮索も、サクッと終わらせられる。 「私はイイコなのだ。スマートフォンのお礼のぶんも兼ねて、ちゃんと九蔵を悦くするとも」 「っく、ぅ……」  正面から掴んでいる九蔵の腰に挿れた両手の指を、ニューイは魂が感じるように動かした。九蔵はそれに合わせて濡れた勃起を自ら扱き、淫らな行為に耽る。  人間が快楽を得ると立ち上る色欲。  それによって昂る性気が悪魔の食糧になるので、ニューイに餌をやる時はまず九蔵が感じなければならない。 「ん? ん、んー」 「ぁ……はっ……ぁ…っ……ぅ……」 「ムフフ」  余計な話が終わると、途端にこの行為は、酷く淫猥な空気を漂わせた。  静かに様子を伺うニューイは九蔵が感じると嬉しげにするくらいで、奉仕精神に溢れている。こちらは魂イキがクセになったら困るというのに考えの足りない悪魔様め。 「ふっ……ぅ、ぅ……」  コリッコリッと魂の器とやらを指で引っかかれ、背筋をゾクゾクと駆け上がる官能に、九蔵はかんたんに噛み締めた唇から吐息混じりの嬌声を漏らしてしまった。  行き場のない快楽により、ニューイの肩の布に舌をのばしてペロ、と舐める。  意味なんてない。無意識だ。  ペロ、ペロ、と舐めながら、真っ赤な果実のように育った肉棒を擦るたび、先端から濃厚な蜜が溢れ出して手のひらを湿らせる。 「ン……ふっ……強く……ニューイ……」 「仰せのままに、である」  蚊の鳴くような声でオネダリをすると、ニューイはムフフと笑って、望むがままに九蔵を感じさせた。深く指を埋め、掴んだ器を強く愛撫する。
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