第二話 気になるモテ期

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「イク、から、はっ……俺の声、聞いて、くれ、ニューイ……っ」 「それは、もちろんだとも。私は九蔵の声を聞き逃したりしない。九蔵が聞いてと言うならなんだって聞くのだ」 「あ、でも、恥ずかし、い」 「? 大丈夫。恥ずかしくなんてない。私は恥ずかしい九蔵も大好きだぞ?」 「っ……イク、イっ──んん、んっ!」  ひときわ大きな声をあげてビクンと仰け反り、九蔵は絶頂した。  優しい声と優しい手つきで柔らかく受け入れてくれる悪魔の微笑みを見つめながら、張り詰めた屹立から、練り込んだ精が迸る。  それと同時に、ニューイが九蔵の鼻頭にチュ、と唇を触れさせた。  体からブワリと性気が抜け出し、ニューイの食事になるのだ。  体に力が入らず脱力すると、ニューイに抱き留められた。 「あ……っ……んっ……は……」  ドク、ドク、と数度精液を吐き出して項垂れていくモノを握り、九蔵は淫猥な身体を震わせる。 「はぁ……っ本当に美味だな、九蔵は。この瞬間のために私はソージキと戦い、センタクキにそっぽを向かれながらも人間らしく生きているかもしれないぞ……」  耳元で仕事終わりにビールを飲み干したサラリーマンのようなことを言うニューイ。  自分の魂はそんなに美味しいものかと思うが、人間の九蔵には見えもしなければ味わえもしない。  ぐったりと脱力する九蔵を抱きしめ、ニューイはパチンと指を鳴らした。  それだけで九蔵の身体から行為の残滓を綺麗さっぱり浮き上がり、ゴミ箱へポイと捨てられる。  その程度のことにすら能力を使うのが悪魔の常識。すると希代の不器用悪魔が生まれるらしい。  呆れてしまう問題だが、ニューイが綺麗になった九蔵の身体を抱きしめながら機嫌よく擦りつくので仕方ないなぁと思ってしまう。  ニューイは九蔵の寝間着を整えて、九蔵を抱きしめたままベッドに横になった。九蔵はニューイを直視しないよう目を伏せる。  これもいつものことだ。  餌やりタイムが終わったあとは、夢の世界までのピロートーク。 「ん……」 「ふふ、九蔵、お疲れ様だ。今日も比べようもないほど美味である」 「そりゃあ、ようござんすね……」 「世界中に九蔵のおいしさを広めたいくらいだ。だけどそうすると九蔵を狙う悪魔が押し寄せるかもしれないので、私だけの秘密にするのだよ。むふふ」 「まー……他のやつにこんなことされたら恥ずかしすぎてたぶん燃え尽きるから、秘密にしなくても平気だけどなー……」 「くっ九蔵が燃え尽きたら私は泣いて泣いてしょうがないぞ……っ!?」 「そんじゃせいぜい、俺の痴態は秘密にしてくださいな」 「厳守であるっ」  ふすふすと意気込むニューイに、クス、と笑う。  抱きしめて眠られるなんて正直勘弁してほしいし、そもそも九蔵は他人の体温が好きじゃない。落ち着かない。  当初はそう思っていたが、今はこうして少し距離を詰めながら話をすると、心が落ち着くと感じている。  嫌いじゃない。  むしろ、……好きだ。  だからこそ。 (……スマホ……あったら、便利だし……電話とか……まではいかなくても、マインとか……いや、一緒に住んでんのに、電子でまでベタベタすんのもなぁ……話すことなんかねーし……だいたいみんな用事ねー時のマインとか、なに送ってんだっていうな。飯の話とかか? いやいや、一緒のもん食べてますよって……うん)  そんなことを考えながらニューイと話す九蔵は、少し手遅れな気がするぞ、と内心で丸くなるのであった。
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