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母の風邪が治らない。もう寝込んで一週間になる。母は正社員ではないから、休んだら休んだだけ、給与は差し引かれる。そうだよなあ、もう68歳で、本来なら自宅で優雅に定年後の生活を楽しんでいてもおかしくない齢なんだよな、と私はしずかに落ち込んだ。
母が寝込んでいるので、しぜん、食事は私が仕事から帰ってからつくることになる。私の料理は、はっきりいってそこまで美味しくない。レシピ本を確認しながらつくるとものすごく手間だし、そのわりに美味しいものができないので、母が寝込んで3日目からはお惣菜をスーパーで買ってくることにした。
母は病院が嫌いだ、と言って、市販の風邪薬でしのいでいる。それがだめなんじゃないか、やはり来週総合病院に母を連れていこう、そう思いながら母に食べたいものを聞いたら、ちいさな子供みたいな声で「フルーツ白玉が食べたい」と言った。
「しらたま?」
私はびっくりした。ついぞフルーツ白玉なぞ、私が小学生までは母がつくっておやつに食べていたものの、中高生以降はそこまで私が好まなかったせいか、食卓にのぼることはなくなっていた。
「あの、プリンとかゼリーじゃだめなんだよね? お母さん、白玉がいいんだよね?」
布団の中の母に聞いてみる。母は、弱弱しくうなずいた。仕方ない。
「もいちど、スーパー行ってくる。21時までは開いてるから」
白玉なんてつくったことない。それもフルーツ白玉ってなんだ。Google先生、教えてください。私はスマホを検索して、だいたいの作り方をつかむと、車のキーをとった。
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