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10月21日、NPO法人JARA代表理事A氏(69歳 男性)の証言
どうも、ご迷惑をお掛けして申し訳ないと思っております。ジャパン・アニマルライツ・アソシエイツの代表のAと申します。うちの団体はJARA(ジャラ)と略されることが多いので、以後はその略称を使いたいと思います。
JARAは私が4年前に立ち上げた団体です。NPO法人は設立するときに10人の会員が必要となるのですが、最初はあまり賛同してくださる方もおらず、私の旧友や親戚に頭を下げて会員になってもらい、やっと設立できたという状況でした。今の参加メンバーは80人くらいでしょうか。その中にはオンライン参加のみのメンバーもいます。
その前ですか? 私はとある役所の外郭団体で事務員として働いておりました。ええ。定年退職してからJARAを設立しました。
JARAは、動物愛護を目的とした団体です。私はもう20年ほど前から、保護犬や保護猫の里親探しをしている団体でボランティアをしていました。と言っても、大したことはしてなくて、保護犬の散歩を手伝ったり、犬を欲しがっている知人がいたら紹介したり、あるいは犬や猫のエサ代の募金を募ったりと、その程度の簡単なことではあったんですが。
で、定年退職したことだし、ここはひとつ本格的に自分の団体を立ち上げて活動しようと始めたのがJARAです。JARAの運営費は会員やメンバーからの会費や有志による寄付でまかなっています。
JARAを始めた動機ですか?
大したものではありません。ただ単に、生命を大切にしようと、それだけです。私は子供のころから動物が好きでしたから。
最初は捨て犬や捨て猫などのペットを保護することだけをやっていたんですが、会員が増えていくにつれ、勉強会や講習会を開いたり、またデモをやったり動物虐待をしているところへ抗議をしたりと、多様化していきました。
私自身はあまりそういう過激な行動は感心しなかったんですが、団体の活力を維持するにはそういうのも黙認せざるを得ないというか……、穏和なことばかり言ってると、いわば「飽きて」しまうんでしょうね。
今月1日に市街地でクマが射殺されたことについては、私自身はやむを得なかったことではないかと思っています。山を下りて市街地に出てくると、人間に危険性が及びます。過激な動物愛護団体の中には、動物にも人間と同じ権利を付与するべきだという主張をして、動物の殺害は殺人と等しく刑事罰を科すべきなどと言っている人がいますが、私はそれには反対です。
あくまでも第一は、人間の安全と生活です。人間の生活を犠牲にしてまで動物を愛護するべきではないと思っています。
いわゆる獣害という動物も、生態系の一部なのです。クマが有害だからと言って、仮に絶滅させてしまうと、生態系のバランスが崩れてそれは必ず人間にも悪い影響をもたらします。だから、人間が豊かに生きるために、動物も保護しようというのが、JARAの当初の理念だったわけです。
クマはなぜ人の住む市街地にまで出てくるか。いろいろ理由はあります。山でクマのメインのエサとなるどんぐり等が不作だったというのが大きいのでしょうが、一度人間の食べ物の味を知ってしまったクマが、食べ物を求めて市街地にやってくるというケースが実に多いのです。
おそらく、キャンプや登山などのレジャーで山に入った人が、残飯をそのまま山に放置して、それがきっかけになるのでしょう。そうして人間の食べ物の味を覚えたクマが市街地にやって来るようになった結果、射殺されたというなら、明確にクマは被害者で人間が加害者です。
繰り返しますが、今回のクマの射殺はやむを得なかったと思っています。
人間とクマが共存するには、山に入る場合はきちんと食べ残したものを持って帰るなど、人間のほうが自然に暮らすことのマナーを守る必要があるのです。それを怠ったことによる悲劇は、避け得る以上は避けるべきです。
人間と動物はともに快適に生きていくべきです。その中で、失われる生命を最小化しようというのが私の理想です。
これは、そんなに異状な思想でしょうか?
さて今回私が逮捕されたことについてですが、容疑については明確に否定いたします。即釈放してくださるようお願いします。
団体のメンバーが△△市役所に抗議に行き、役所の業務を妨害したということですが、私はその日親戚の法事で隣の県に行っててデモには参加していないんですから、私が業務妨害をしたという事実は有り得ません。
メンバーが代表である私の名前で抗議の文書を提出したということですが、おそらくメンバーの誰かが勝手に私の名前を使ったのでしょう。
正直迷惑しております。
しかしまあ、うちの団体のメンバーがやったことですから、法的にはともかく道義的には代表である私に責任があると思っています。
ええ……。団体メンバーの統率が取れていないというのは、耳の痛いご指摘ですが、認めざるを得ないでしょう。ただ、NPO法人というのは、株式会社などの営利団体と違って、利益で結びついているのではなく、理念や思想で結びついているのです。お金を払っているわけでもない、むしろ会費やボランティアをお願いしているメンバーに、強く命令を出すのはなかなか難しいのです。
私のリーダーシップが欠如しているあいだに、団体は過激な連中がいつの間にか増えていって、当初想定していたものよりもだいぶ違う方向へ進んでいくようになり、デモや抗議活動がメインになってしまったのです。
デモや抗議のような、プラカードを掲げ声を荒げて誰かを糾弾するという行為は、自分が正義の側に立っている気持ちになって、団結を強めることになるんでしょうね。とりあえずやりすぎないようにといつもメンバーには言っているんですが、今回は終日市役所前を占拠して抗議の電話は数十回掛けたということですから、さすがにやりすぎだと思います。
最近まで私も知らなかったんですが、ヴィーガン向けの料理教室などをメンバーの中でやっていたりするそうです。まあ、その活動は誰かに迷惑をかけることはないでしょうが……。
いずれにせよ、今回のことで市役所職員の方や猟友会の方、また警察の方にもご迷惑をおかけしたのは間違いないのですから、代表として深く反省しております。
今後のことについてですが、JARAは解散する方向で検討したいと思っております。
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