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11月2日、NPO法人JARAのメンバーC氏(大学生 18歳 女性)の証言
Cと言います。□□大学国際関係学部の一回生です。私はまだ学生ですが、自分をアクティビストだと思っています。ほかにもいくつかの団体に所属して、地球の未来を少しでもよくするために活動しています。
ええ、おっしゃるとおり、Aさんを殺害したのは私です。
私がJARAのメンバーになったのは、高校二年生のときです。きっかけは、あらゆる生命を大事にしなければいけないと思ったからです。
最初は動物愛護とかにはあまり興味はなかったんですけど、JARAの活動は動物愛護だけでなく、生命の尊重やSDGsなども含まれていて、勉強会に出席するうちのとても素晴らしいものと思うようになり、私もメンバーとなりました。
JARAの会費は月2000円と少し高く、学生だった私には厳しいものでしたが、それだけの価値はあったものだと思います。
え、SDGsについてご存知ないんですか? 本気で言ってるんですか?
自分で調べてください。よくもそんなことを言えますね。あなたみたいな意識の低い人が、世界にはびこるあらゆる不幸の原因になっているんです。少しは社会人としての自覚を持ってください。
Aさんを殺した動機ですが、説明しなければなりませんか?
それは、生命が大事だからですよ。ほかに何がありますか。
AさんはJARAのファウンダーということで代表理事になっていましたが、歳のせいかあまり積極的に活動していなかったようです。
先月、女の子のクマさんが殺されたことについて、抗議のデモをしようと企画していたときも、Aさんやんわりと反対していて、参加もしたがっていませんでした。
もちろん私は市役所前のデモに参加しましたし、翌日からは抗議の電話を必死で掛けました。もちろんそれらは違法行為なのかもしれませんけど、それは法律のほうが間違ってるんですよ。
当たり前でしょう?
動物には私たちと同じ権利が認められるべきです。動物は人間の道具ではありません。意識があり、感情があり、痛みを感じる、我々と同じ尊い生命なのです。
ああ、Aさんを殺した動機でしたね。
私はAさんに騙されていたんです。
JARAは動物愛護を目的とした団体ですから、当然メンバーはヴィーガンの人ばかりです。ヴィーガンはわかりますよね? 昔の言葉で言えばベジタリアンです。
もちろん私もヴィーガンです。人間は植物からのみでも、十分に生きていける栄養を摂取できるのです。動物愛護をしている人間が、肉食をしてはいけないのは当たり前じゃないですか。
先月末、逮捕後に釈放されたAさんがいきなりJARAを解散すると言い出しました。
解散する理由を聞き出す過程でようやく私は知ったのですが、Aさんは私たちに隠れてこっそり肉食をしていたのです。
Aさんは、牛さんや鶏さんや豚さんを殺す側の人間だったのです。
私たちの怒りが、お分かりになるでしょうか。毎月高い会費を納めておきながら、代表理事であるAさんが我々の活動の精神を踏みにじっていたのです。
心の底から悔しく思いました。
もう逮捕されたから本音を言ってしまいますが、私は肉食をする人間は殺してもいい、いや殺すべきだと思っています。
極端な思想だとお思いになるでしょう? あなた方は無知ですから。
肉食が罪深いのは、動物を殺すからという理由にとどまりません。肉食は人間をも殺すのです。
畜産が大量の温室効果ガスを発生しているのは、まぎれもない事実です。とある団体の試算によると、排出される温室効果ガスのうち14%が畜産に関連する産業から出されているのです。
地球環境の保護は、思想や立場に関わらず取り組まなければならない問題です。我々は地球から離れては生きていけないのですから。
地球温暖化は、集中豪雨や巨大ハリケーンなどの発生の原因となり、防災インフラの整備が遅れている発展途上国の人ほど多くのダメージを受けるのです。そしてその影響は、未来のものではなく、すでに世界各地で発生しています。
つまり私たちが肉を食べれば、人が死ぬのです。
それは、私たちが間接的に人肉を食べているようなものではないですか。
動物に限らず、生命を守るためには、肉食は徹底して滅ぼされるべきなのです。
もちろんAさんを殺したとしても、肉食が根絶されるわけではありません。しかし動物愛護をしていた人間が肉食をしていたということは、一般人が肉食をしているよりも罪深いと言ってもいいでしょう。
絶対に許せません。
これが私がAさんを殺害した理由です。
私は正当防衛により、無罪を主張したいと思います。私は地球の未来を守るためために行動したのですから。
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