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12月20日、主婦D氏(A氏の長女 40歳)の証言
私は殺害されたAの娘のDでございます。
父を殺したCに関して、いくつか言いたいことがございます。
まず、なぜCは実名を出されて報道されないのでしょう。マスコミにより被害者である父は実名を晒されました。なのに、Cは未成年だということを理由に匿名で報道されています。こんな不公平があってもいいんでしょうか。
Cは、父が設立した団体の理念を、父が犯したことを犯行の理由に挙げていますが、JARAはあくまでも平和的に動物の生命を守ることを目的にしたものです。最近、団体の活動が過激化したのは、後から入ってきた人がほとんどJARAを乗っ取る形になって、どんどん精鋭化していったのです。
Cの言うとおり、父は菜食主義者ではありませんでした。しかし、JARAに加入する条件に菜食主義者であることを求められるわけではないし、菜食主義を強く推進しているわけでもありません。勝手にCが父をヴィーガンだと思い込んでいて、勝手に憤ったのです。
父は、動物に大きな負担を掛けることになる肉食や畜産は廃止することが望ましいとは考えていました。しかし、現に畜産を生業にして日々の糧を得ている人がいる以上、急激に廃止したりするべきではないという意見を持っていました。
人間の経済活動に影響を与えない程度に徐々に菜食主義を広めていけばよく、父も積極的に肉を摂ることはせずに、人から進められて断れば角が立つといった場合のみに、肉を摂っていました。
JARAの会費に関しても、Cはでたらめを言っています。
会費が毎月2000円だったということですが、それは嘘です。あくまでもJARAは自由参加の団体で、会費は年に2000円を目安として、無理のない程度に、自由意思により寄付をいただけるならありがたく受け取る、ということになっていたはずです。少なくとも、父がJARAを設立した当初はそうなっていました。
もしかしたら、後から入ってきた過激な人物のひとりが会計責任者ということになっていましたから、その人が会費の値上げをしていたのかもしれませんが……。
とにかく、父は動物愛護を啓蒙普及するには、現実と折り合いを図りながら漸進的にやるべきという考えを持っていました。世間の人が色眼鏡で見ているような過激な連中ではありません。
動物を守るためなら人間を殺していいなんて、認められるはずがないじゃないですか。
しかし、私がいちばん許せないのは、Cの弁護士が「Cは善悪の判断がうまくできない心神喪失または心神耗弱状態にあったため、無罪を主張する」と言ったことです。
たしかに、Cは頭がおかしいと思います。言っていることのほぼすべてに賛同することはできません。温暖化うんぬんは屁理屈だと思います。
人殺しをする人間なんか、大なり小なり異常な状態にあるのは間違いないわけで、頭がおかしいから人を殺しても無罪だというなら、すべての人殺しが無罪になってしまうではありませんか。
正直に言って、遺族として私はCを死刑にしてほしいと思っています。
父は動物愛護をやっていたこともあり、生命を非常に大切にする人でした。自分のNPO法人だけでなく、よそのリベラル系の人権団体でもたまに活動していて、その中には政府に刑罰としての死刑廃止を求めているところもありました。
父は、Cを許してやってくれと言うかもしれませんが、私にはできません。
私は法が許す限り最大の罰をCが受けるよう望みます。
本当に、生命は等しく大切なのでしょうか。そもそも、生命の平等とはいったい何なんでしょうか。
了
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