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大好き
しばしの沈黙の後、和泉が口を開く。
「俺たちの関係を、社内で公表してもいい。」
「えっ!」
意外な言葉に、有希は固まった。
「だがそれをすると、お前は総務部へ戻ることになるが。有希がその方がいいなら、そうしよう。」
社内恋愛は禁止ではない。
だが、同じ部署にいることはタブーであるという暗黙の了解がある。
総務部へ戻ると仕事で和泉に関わることはなくなる。
姿を見ることもなくなってしまう。
それは寂しい。
「やだ……。」
漏れ出た声は切なくて、和泉の袖を掴んだ。
離れたくない。
いつだって側にいたい。
公私混同はしないけど、仕事中だってできれば近くにいたい。
顔が見れる、声が聞こえる距離にいたい。
すがるように和泉を見る有希に、和泉はまた頭をポンポンとしてやった。
それだけで安心するようなほっとするような、暖かい気持ちになる。
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