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来客に出したコーヒーカップを片付けに給湯室へ行くと、和泉がいた。
腕組みをし壁に持たれ掛かって目を閉じている。
横を見やれば、バリスタでコーヒーを作っているところだった。
(もしかして寝てる……?)
そう思って給湯室へ入るのを躊躇っていると、ふと目を開けた和泉と目が合う。
「ああ、すまない。」
「いえ、お疲れですか?」
少し横にずれて有希が入りやすいようにしてくれる。有希がカップを流しに置きながら尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「ちょっとサボっていただけだ。」
「サボって……って!えっ!」
和泉に似合わない”サボる”という言葉がまさかの本人の口から出てきて、有希はカップを落としそうになった。
「和泉課長がサボるとか似合わなさすぎます。」
クスクス笑うと、和泉は眼鏡をくいっと上げて反論する。
「俺を何だと思っている?」
「えっと、真面目を絵にかいたような方でしょうか。」
「……コミュ障だからな。よくそう言われる。」
「コミュ障!」
有希は失礼ながらも笑い転げてしまった。
和泉の口から”サボる”と出てきただけでも驚いたのに、まさかの“コミュ障”とは。
有希が笑っていると和泉の眉間にシワが寄った。
「ごめんなさい。意外すぎて。でも、こうして普通に会話ができるので、和泉課長はコミュ障なんかじゃないですよ。」
有希が言うと、
「相手が岡崎だからな。」
と、何でもないように言った。
(そ、それはどういう意味でしょうか?和泉課長、心臓に悪いです~。)
有希は頬が熱くなるのを隠すように急いでコーヒーカップを洗った。
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