翻弄

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翻弄

休日はたまに大型書店へ行く。 ここの書店は珍しい本がたくさん置いてあるので、一日中いても飽きないくらいだ。 それにカフェも併設されていて、どうぞ長居をしてくださいと言っているようなものだ。 図書館のような、それよりももう少し賑やかなこの空間が有希は好きだった。 今日もふらふら当てもなく本を物色する。 気になる本があって手を伸ばすと、微妙に取れない高さだった。 取れないならまあいいかと思っていると、背後から、 「取ってやろうか?」 と声を掛けられた。 振り向くと和泉が立っている。 ああ、前にもこんなようなことが会社であったなぁと思い出す。 私服の和泉は、職場で見る和泉とはまた違ったかっこよさだった。 ぼんやり見とれていると「どうした?」と声を掛けられ、はっとする。
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