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「仕事はどうだ?急に異動させてすまなかったな。」
「いえ、大丈夫です。」
そういえば有希を指名したのは和泉だという総務課長の言葉を思い出す。
聞いてもいいのだろうか?
「あの……和泉課長が私を指名したと聞いたのですが……?」
勇気を出して聞いたら、「ああ」といとも簡単に返事が返ってきた。
「えっと……なぜ私を?」
コーヒーを飲んでいた和泉の手が止まる。
そっとコーヒーカップを置くと、有希をじっと見据えて言った。
「お前が好きだから手元に置きたいと思った。せっかく課長になったんだから、今こそ権限を使うべきだろう?」
さらりと言う和泉に、有希は一気に体温が上がった。
待って待って待って!
今好きだって言わなかった?
ど、どういうこと?
「……それは部下として……ですよね?」
恐る恐る聞いたのに、すぐさま否定される。
有希は鼓動が抑えられず、真っ赤になった頬を両手で覆った。
何だろうこれは。
こ、告白?
ど、どういうことなのー?
突然の出来事に頭の処理が追い付かない。
当の和泉は、何でもなかったかのようにコーヒーを飲んでいる。
「あ、あの、和泉課長……?」
かろうじて絞り出した言葉に被せて、
「ところで役職で呼ぶのは社内だけにしてもらえないだろうか?」
「へっ?」
すっとんきょうな声が出てしまう。
「課長と呼ぶのは会社にいるときだけにしてくれ。外では恥ずかしい。」
いやいや、恥ずかしがるのそこじゃないですよね?
い、和泉課長~!
有希はもう、何が何だかわからず、とにかく火照った顔をどうにかしたかった。
したかったのに……。
「有希?」
和泉に名前で呼ばれて、有希は撃沈した。
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