確信犯

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確信犯

今日もまた来客対応が終わり、コーヒーカップを片付けに給湯室へ行く。 入口で足が止まった。 またバリスタでコーヒーを入れながら、壁に持たれ掛かって目を閉じている和泉がいたからだ。 (寝ているのかな?) そう思ってそっと入っていくと、ふと目が合う。 「またサボっているのを見られてしまったな。」 和泉はふっと微笑むと、コーヒーを持って出ていこうとする。 「い、和泉課長!」 有希は思わず呼び止めた。 振り向いた和泉に、「あの、えっと…」とわたわたしながら、来客対応で余った小分けされたクッキーを差し出す。 「よかったらこれ食べてください。余り物ですけど……。」 差し出した手に和泉の手が触れた。 それだけで心臓が跳ね上がる。 なのに、 和泉はそのまま有希の手を握った。
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