確信犯

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給湯室に扉はない。 いつ誰が入ってくるか、誰が通りかかるかもわからない。 それでも答えを聞くまで離さないといった和泉の態度に、有希はとうとう折れた。 真っ赤な顔で、少し俯き加減に、それでもちゃんと和泉を見て。 「私も……好きです。」 恥ずかしくてそれ以上何も言えない有希に、和泉はふっと微笑むと、頭をポンポンと撫でた。 「ちゃんと言えたご褒美だ。」 そう言って有希の顎をすくったかと思うと、触れるだけのキスをした。 まるで有希が和泉のことを好きだと知っていたかのように。 それはとても甘く優しくて。 有希の顔を見ると、いたずらっぽく笑う。 和泉は満足したのか、何事もなかったかのようにコーヒーを片手に給湯室を出ていく。 有希は身体の火照りが収まるまで、その場を動くことができなかった。 有希が好きになった人は、確信犯だった。
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