1187人が本棚に入れています
本棚に追加
給湯室に扉はない。
いつ誰が入ってくるか、誰が通りかかるかもわからない。
それでも答えを聞くまで離さないといった和泉の態度に、有希はとうとう折れた。
真っ赤な顔で、少し俯き加減に、それでもちゃんと和泉を見て。
「私も……好きです。」
恥ずかしくてそれ以上何も言えない有希に、和泉はふっと微笑むと、頭をポンポンと撫でた。
「ちゃんと言えたご褒美だ。」
そう言って有希の顎をすくったかと思うと、触れるだけのキスをした。
まるで有希が和泉のことを好きだと知っていたかのように。
それはとても甘く優しくて。
有希の顔を見ると、いたずらっぽく笑う。
和泉は満足したのか、何事もなかったかのようにコーヒーを片手に給湯室を出ていく。
有希は身体の火照りが収まるまで、その場を動くことができなかった。
有希が好きになった人は、確信犯だった。
最初のコメントを投稿しよう!