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「避けてなんか、いないです。」
否定した言葉は少し震えてしまって、和泉の眉間にシワを寄せた。あきらかに不満そうな和泉の顔を見ると、なぜか罪悪感が生まれてしまう。
「有希。」
自然と視線が俯きがちになっていたらしい。
名前を呼ばれて顔を上げれば、目と目をしっかり合わせてくる。
外すことのできないまっすぐな瞳が有希を貫く。
(なんで和泉さんにはわかっちゃうのかな。そんなに態度に出てたかな。別に大したことではないのに。)
有希はそう思ったが、そんな有希の頭を和泉はポンポンと撫でた。
何も言わないけれどその仕草だけで優しさが伝わってきて、有希は胸がぎゅっとなった。
今にも泣き出しそうな顔をする有希に、
「場所を変えよう。」
和泉はそう言って立ち上がる。
まわりに人がいると話せないとでも思ったのか、そんな優しい気遣いにも有希はまた胸がぎゅっと締めつけられた。
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