1121人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
和泉に半ば強引に手を引かれて連れてこられたのは、お洒落なマンションだった。
「ここ……?」
「俺の家だ。家の方が話しやすいだろう?」
そう言って強引に有希を連れ込む。
和泉が一人暮らしをしているのは聞いていたが、まさか今日連れてこられるとは思っておらず有希は一気に緊張した。
中に入るとあまり物が置いていないシンプルですっきりとした部屋で、和泉らしさが感じられる。
「さて、話してもらおうか?」
和泉は有希をソファーに座らせると、自分も横に座り、眼鏡をくいっと上げた。
「あ、えっと……?」
何て言えばいいんだろう?
ただのヤキモチです、と言えと?
もとはといえば私が「和泉さんが優しいこと、皆に知ってもらいたい」と言い出したこと。
それなのに、仲良くしてるのを見るのが嫌だなんて。
そんなの私のわがまま。
そんなことあなたに言えるわけないじゃない。
呆れられたら困るもの。
言葉に迷って和泉を見ると、有希を見据えたままじっと待っている。
眼鏡の奥の瞳が、優しいけれど厳しい。
最初のコメントを投稿しよう!