タク(8)

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タク(8)

姉は、高校を卒業すると、地元で一番大きいデパートに就職した。 いっぽう俺は、高校を卒業すると、調理師専門学校に進んだ。 専門学校を卒業すると、調理師として、ホテルに就職した。 ホテルを就職先に選んだのは、料理人だけでなく、いろいろな仕事をしている人たちと知り合えると思ったからだ。 俺は、人と関わるのが好きだった。 ここで、たくさんの友人知人を作りたいと思っていたし、実際、作った。 そして、俺の夢。 それは、俺の作る料理で、みんなを笑顔にすることだ。 桜舞う季節。 俺は、高揚し、晴れ晴れとした気持ちで、社会人としての第一歩を踏み出した。 十九歳の春だった。
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