キミの側は落ち着かない

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俺は今最高に緊張していた。16年生きてきた中で一番の緊張だった。 受験よりも緊張するってどんだけ……って思うけど、そのくらい大事な事が行われるのだ。 それは――――。 席替え。 何を大げさな、と思うかもしれない。 だけど、この学校では入学時は出席番号順に座るが、一週間後に正式に席替えをするのだ。 卒業するまで3年間クラスが変わる事もないし、席も変わらない。 だから、すごくすご――――く重要な事なのだ。 前だろうが真ん中だろうが後ろだろうがこの際どこでもいい。 あいつの隣りでありさえすれば……。 ごくりと唾を飲み込み席番号の書かれた紙を開き黒板をみる。 27番……。左から二番目の一番後ろの席。 そして―――。 俺は。 何に? 運命に! 俺の隣りにあいつが座っていたから。 俺は、門倉和(かどくらなごみ)の隣りの席をゲットできたんだ! 思わずこぶしを小さく握り「っしゃっ」と呟く。 俺が無表情を装って席に着くと門倉が話しかけてきた。 「平山くん、これから卒業までよろしくね」 少し照れたように笑う。 門倉まじ天使! 「あ、あぁ」 俺はそっぽを向きぼそぼそと言った。 内心は町中逆立ちして喜びを叫びまわりたいくらいだったが、俺は口下手なのだ。 自分の気持ちをうまく伝える事ができない。 「和ーお前ここかー。いいなー。俺一番前なんだよ。最悪ー。代わらね?」 「やだよー。俊祐(しゅんすけ)も授業中居眠りしなくてすむし良かったじゃん」 「えー。授業中の居眠りは、俺の貴重な睡眠時間なんだぞー」 「夜遅くまでゲームしすぎだよ。早く寝ればいいだけでしょう?」 情けない顔をしてぎゅーっと門倉に抱き着いている幸田俊祐(こうだしゅんすけ)は、門倉とは幼馴染らしい。二人の距離はかなり近い。 胸の辺りがちりりと痛んだ気がした。 痛みをごまかすように鞄の中を意味もなく探った。
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