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1日目
書類には、あどけない少女の顔写真があった。横には名前や生い立ちなど、あらゆる情報が並んでいる。
流し見ただけで、悲惨な人生の持ち主だと分かった。つい哀れんでしまうほどには。
少女の名前はキナ、年齢は弱冠十一で――。
「ちょっとクロ! 聞いちゃったんだけど!?」
声に反応し、振り向く。そこには同期の友人がいて、慌てた様子で近付いてくる。
発言で、つい数分前に聞かされた言葉を思い出した。仕事を貰う際、社長に言い渡された――今回失敗すればお前は死ぬ、との言葉が。
「今回は絶対逃がすんじゃないわよ!?」
それを聞いたのだろう。必死で念を押してくる。
「上手くやるさ」
適当な返事を演じ、掲げた右手を揺らした。刺すような視線を振りきり、会社を後にした。
再び少女を見る。笑みを飾る顔は愛らしく、とにかく幼かった。再確認した最後の一文に、言い表せない感情が巣食う。
文末には、ただ淡々と"死因:虐待死"とあった。
「今回こそは回収しなきゃな……」
人間用の容姿を創造し、真っ黒な羽根も生やす。そうして地上へと降り立った。
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