4・4回目の不倫

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「あ、あのさ………」  いろいろ話しかけるも、夫婦茶碗は無言だ。 (当たり前である) 「むなしい。もう、この際(*´ε`*)チュッチュするしかない」  俺は意を決して茶碗に手を添え口元へ。 「うん、硬くて冷たい」  俺は茶碗を、座布団の上へ戻した。 「俺のファーストキスの相手は夫婦茶碗か。でも、これで大人の仲間入り」  もう、恋愛上級者を名乗っても良いのでは?  なんだかいい気分になって来た俺は、愛用のモザイクチャンネルへアクセスした。 モザイク3:こんばんは! モザイク1:よう、モザイク (みんなモザイクである) モザイク2:今日はちゃんとモザイクだな (どういうことだ) モザイク3:あの、突然質問なんですが、生き物以外と不倫ってしたことありますか?  やはりここは情報を仕入れておくべきと、俺は判断した。 モザイク1:俺はないな。しょっちゅう禿おやじと不倫するが。 (それは前にしか進まないからだ) モザイク2:俺はあるよ。鳥のフンと。 モザイク3:はいいい⁈ モザイク2:オシドリのフンが落ちてきてさ、イベント発生よ。あんときゃ初心者だったから、パニックになったけど。今なら冷静に不倫できる。 (どんな意志表明だ!)  お、奥が深いな。三フリの世界は。 (三歩行けば不倫の略である) ───1時間後  俺は、不倫するなら生き物の方が良いと学んだ。 「やっぱり、無口な相手だと侘しいな」 (無口どころじゃない) 「今日は一歩、大人の階段を上った。これで婚期が一歩俺に近づいたぜ!」 (不倫を望んでいる時点で、婚期は遠い) 「そうだ! 友人に報告しないと」  俺は昨日の不倫相手に、電話をかけることにした。 (まるで二股のような言い方だ) 「あ、もしもし?」 『おう、どうした』 「俺、ついにファーストキスしたぜ!」 『おめでとう』 「キスって、硬くて冷たいな。お前の言ってた通りだった」 『は? 何言ってんの、お前』  俺はとりあえず、名前を変えようと思ったのだった。
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