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「あ、あのさ………」
いろいろ話しかけるも、夫婦茶碗は無言だ。
(当たり前である)
「むなしい。もう、この際(*´ε`*)チュッチュするしかない」
俺は意を決して茶碗に手を添え口元へ。
「うん、硬くて冷たい」
俺は茶碗を、座布団の上へ戻した。
「俺のファーストキスの相手は夫婦茶碗か。でも、これで大人の仲間入り」
もう、恋愛上級者を名乗っても良いのでは?
なんだかいい気分になって来た俺は、愛用のモザイクチャンネルへアクセスした。
モザイク3:こんばんは!
モザイク1:よう、モザイク
(みんなモザイクである)
モザイク2:今日はちゃんとモザイクだな
(どういうことだ)
モザイク3:あの、突然質問なんですが、生き物以外と不倫ってしたことありますか?
やはりここは情報を仕入れておくべきと、俺は判断した。
モザイク1:俺はないな。しょっちゅう禿おやじと不倫するが。
(それは前にしか進まないからだ)
モザイク2:俺はあるよ。鳥のフンと。
モザイク3:はいいい⁈
モザイク2:オシドリのフンが落ちてきてさ、イベント発生よ。あんときゃ初心者だったから、パニックになったけど。今なら冷静に不倫できる。
(どんな意志表明だ!)
お、奥が深いな。三フリの世界は。
(三歩行けば不倫の略である)
───1時間後
俺は、不倫するなら生き物の方が良いと学んだ。
「やっぱり、無口な相手だと侘しいな」
(無口どころじゃない)
「今日は一歩、大人の階段を上った。これで婚期が一歩俺に近づいたぜ!」
(不倫を望んでいる時点で、婚期は遠い)
「そうだ! 友人に報告しないと」
俺は昨日の不倫相手に、電話をかけることにした。
(まるで二股のような言い方だ)
「あ、もしもし?」
『おう、どうした』
「俺、ついにファーストキスしたぜ!」
『おめでとう』
「キスって、硬くて冷たいな。お前の言ってた通りだった」
『は? 何言ってんの、お前』
俺はとりあえず、名前を変えようと思ったのだった。
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