孤独の中、届かぬ祈り

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孤独の中、届かぬ祈り

 あの日の翌日の朝。目覚ましに起こされ、僕が目を覚ますと、まるで夢だったかのように、先輩がいた跡は綺麗すっかり消えていて、先輩の匂いがベットに少しあるくらいしかなかった。  そして、一応登校での待ち合わせ場所にしばらく待ってみるも、先輩が現れることはなく、どころか、昼休みも、下校時も、先輩の姿はどこにもなかったのだ。  そう、その日以降、先輩が学校に来ることはなかった。  それから、色々な行事を僕は一人で過ごして来た。  だが、そんな間にいつしか、僕の見る世界から色が消えてしまっていたのだ。  蓮の花を最後に、どんな物を見ても、色褪せていて、モノクロ映画にいるかのように錯覚している。  これが映画のように、フィクションだったらいいのに。  そんなことさえ思いながら、今日も葉さえもついていない桜並木を通りながら学校へと登校していた。  まぁ、クラスに特別仲のいい人も居らず、憂鬱感残るまま誰とも話したくないといこともあり、ずっと一人で音楽ばかりを聴いている。  授業も、上の空のまま受けているせいで、期末テストは最悪。  やがて、芸術の授業で僕の目に異常があることが発覚し、すぐさま受診した病院では、心因性の色覚異常だとかなんだとか。  別にそんなことはどうでもいい。  ただただ、また絵が描ければいいのだ。  そればかり唱えてみたが、直ぐに精神科へと回され、話はカルテの中だけに残され、解決方も教えてくれないまま、言われたことは「辛かったね」と「また次も話を聞くから」だけ。  一応、学校から言われていることもあり、通うだけ通っているが、いつになっても変わらないことに、いい加減、僕も耐え切れなくなってしまう。  あぁ、もしかしたら僕は本当に、どこか異常なのかもしれない。そう思いながら、毎日、何粒もある薬を一日に三度と飲んでいる。  次第にキャンパスに下書きを描くだけ描くと、すぐに色を塗り、完成するとすぐに壊して、を幾度も幾度も繰り返した。お金をドブへとひたすらに捨てたことは分かっている。だが、それすらもどうでも良かった。
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