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また会う日を楽しみに
ザ・夏。
ジリジリと照り付けてくる中、僕と先輩は夏を満喫した。
色々な納涼祭へ行っては、人の波に揉まれつつも、綺麗な花火を見たり。海へ行っては、先輩は泳がないくせに、やけに気合の入った水着を着てきたり。大都市へ行っては、ネットで評判なお店というお店を回り、財布を空にしてしまったり。
そんな夏を過ごしたのだ。勿論、楽しくないはずもない。
それでも、時は過ぎ行くもの。
夏の暑さも収まらないまま、学校は新学期へと突入してしまった。
「それで、夏の課題の確認テストで、百点だったはずが名前を書き忘れて零点。しかも追試って」
「うぅ、ついてないです」
「ふふっ。でもさ、それも自分のミスでしょ?」
「いや、まぁ、そうですけど。……って、ちょっ、先輩。笑い事じゃないですよ」
いや、こっちは本当に萎えているんだから。
夏の課題の確認テストがつい昨日あり、今さっきの授業で返されたのだが、まさかの零点。
原因は、名前の書き忘れ。て言うか、マジで試験監督の先生は何をやってたんだよ。
はぁ。
つい漏らしてしまう溜息に、先輩は大爆笑していた。
そんな帰り道。やはり、こんな感じがとても落ち着く。
色鮮やかさこそ道端からは消えて行くが、また巡る季節に乗せて命の輪が繋がれて行くのだと思うと、何となく悪い気分ではない。
「あ、そうだ」
「どうしました?」
「そう言えば、絵は完成した?」
「はい」
「そしたら、見せてよ」
「えぇ」
正直、嘘だろ? なんて言いたかった。
ここからおよそ倍くらいの時間をかけてうちに来るなんて無茶無謀を先輩にさせるわけには行かない。
「ダメに––––」
「と言うと思って、もう親に連絡しました」
「って、何の、ですか?」
「え? 泊まりの」
いや、平然と真顔で返されても。
時々、この先輩は自分の状況を顧みず、心の赴くままに身体を酷使させてしまう。全く、こっちがどれだけの苦労と心配をしているのかも知らないくせに。
なんて、心では呟きつつも、一度目をキラキラさせてしまった先輩はどうやっても止められない。
一応、「寝る場所も布団もないので、僕と同じベットですよ?」なんて言ってみるも、制止の役目は果たされない。どころか、「本当? 嬉しいな」なんて、からかい返されてしまう始末。
まぁ、仕方がないか。
割り切れないまま、溜息を零すと、相変わらずのクスッとした笑い声が聞こえてくる。
「ほら、そんなに溜息ばっかり吐いてたら、幸せも沢山逃げちゃうよ」
「誰のせいですか、ホント」
「さぁ? 誰のせいでしょう」
なんて言いながら、この小道を降り、住宅街を抜けて行く。来た道をそのまま戻るのも何だし、それこそ遠回りになってしまう。
夕焼けに沈む中、溺れぬよう笑い合って進み、愚痴り合って歩いていた。
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