つぶつぶオレンジ

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 昨夜は海に滲む夕陽みたいに、情けない俺を受け入れてくれたじゃないか。俺のトレーナーを着ているくせにまるで他人顔で、何だか無性に腹が立った。  苛立ちがどうにも治まらず、結局、視線を反らして座り直した。背後からは、不規則なリズムに乗った流行りの曲がしれっとした音で流れてくる。  優海は立ち上がり、今度こそコートを羽織った。  声をかけようと思うのに、こういうときだけ何も出てこない。もう少しいればいいじゃん、は拒否されるだろうし、ライブ一緒に行こっか、はすっかりタイミングを逃してしまった。  結局優海は、後腐れなく、実にあっさりと俺の部屋から出て行った。彼女の残した白いコーヒーに目をやり、ああ、だから嫌なんだと溜息を落とす。  ベッドに寝転んで、スマートフォンを拾い上げる。果肉入りジュースを検索してみると、意外にも沢山の商品がヒットした。  何だ、人気商品だったのかよ、となぜか口惜しい思いを抱えながら画面を閉じた。  次にどこかで見かけたら買ってみようと、一人で決意する。そして今度こそ、粒々を全部飲み干して勝ってやるのだ。
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