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神様は何でもできる。何だって出来る。どんな願いもかなえられるし、どんな祈りも受け止められる。けれど、神様にしか出来ないことはあるのだろうか。
神様はある日、そんなことを思ってしまった。
例え、世界の全員が出来なくても、世界の誰かは出来るんじゃないだろうか。たとえ今はできなくても、いつか未来で出来るんじゃないだろうか。だとしたら自分には、存在価値はあるのだろうか。そんなことを神様は考えた。
「神さま、お願いです。」
「その願いは、僕にしか叶えられないものか?」
そうでなければ願いを聞くつもりはないと、神様は口にする。人間は、少しだけ目を彷徨わせてから口を開いた。
「好きです!!私と付き合ってください。」
神様は目を見開いた。確かにそれも願いだけれども。
「君を愛せる人は他にもいる。君と付き合える人も他にいる。それは僕にしか叶えられない唯一の願いじゃない。」
「は?何言ってるんですか?」
「は?」
「どうして私が他の誰かに好きなってもらって付き合わなきゃいけないんですか?私が好きなのはあなたですよ、神様。こういうのは相手が大切なんです。」
人間は分かっていないなあと、ため息をつく。それを見て神様はなんとなく心がざわついた。
「相手が大切と言っても、願い自体は」
「いいですか?他の誰かじゃ意味が無いんです。『あなたが』好きだから、『あなた』に好きになってもらいたくて、『あなた』と付き合いたいんです!!あなたが相手だから、あなたにしか出来ないんですよ。あなたにしか、叶えられないお願いです。」
最後の方の口調はずいぶん穏やかだった。
「それとも、神様は理由をつけて私の想いに応えたくないだけですか?私のことが嫌いなら」
「違う!!」
人間の言葉を遮って、神様は否定した。
神様の心はぐるぐると巡る。予想外の願いに、他の誰でもない自分を望まれた喜びに。
「分かった。その願い、叶えよう。」
神様は自分がここにいる意味があることをこうして理解した。
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