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未来改変機器【KAMISAMA】
『アンリさん、カミサマと言ったら何を連想サレマスカ?』
学習プログラムのAI【センセイ】が、授業の休憩時間に珍しくそんな雑談をしてきた。ホログラムで表示されているセンセイの顔は穏やかで、本当に授業に関係無い話なのだと思った私は、自分の知識の中のカミサマを頭に描く。
「カミサマは【未来改変機器KAMISAMA】の略称…私達人類の身体に誕生と共に埋め込まれるマイクロ機器であり、私達が生涯において一度だけ危機を回避出来るようにタイムリープ能力を搭載している…そんな所でしょうか」
センセイは苦笑いを浮かべると、私をジッと見た。
『アンリさんは私達より余程機械的ですね…そう、“現代”の定義において今の回答は百点満点デショウ』
「昔は違ったという事でしょうか」
私よりよっぽど表情が豊かで人間臭いセンセイに、“機械的”と呼ばれるのはもう慣れっこであった。センセイ曰く、慣れないでもっと感情に出しなさい。とのことらしいが…事実は事実なのだから仕方無かった。
『そうですね。昔の人類にとってカミサマとは絶対的な信仰の対象であり、願いや救いを求める相手デシタ。【神様、どうか私をお救い下さい】といった具合ニネ…その名残で、命の危険等を回避出来るカミサマは名づけられたそうデス』
「けれど折角生涯一度だけ許されているタイムリープ能力を、人間は愚かにも私利私欲の為に使ってしまい、今や赤子を除いてほとんど保有している人物はいないはず」
『願いを聞いてくれるだけだった相手が、絶対に望む未来に変えてクレル…悲シイですが、人の欲とはそういうモノ。そして稀有にもその能力を残している人間の一人が、アンリさん…あなたデス』
センセイは優しい声色でそう言うと、ニコリと笑って見せた。いつもクールなセンセイが見せてくれるこの表情だけが、私の感情を揺さぶる。胸が高鳴って、口元が緩みそうになってしまう。
「『アンリさんがいつ、何の為に能力を使うのか。それを見届けるのが楽しみです…』でしょ?」
私がセンセイの言葉に被せると、センセイは苦笑して『さぁ、授業を再開シマスヨ』と誤魔化す様に言った。私はセンセイとのこの時間が大切で…とても好きだった。
だから…翌日に起こった変化がとても信じられなかった。
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