故郷と武器商人

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 十ドル札を取り出してカタリナに手渡すと、にこりとしてそれを受け取る。 「トレーラーと武器の代金、確かにいただきました」 「十ドル札ですが?」 「値段は私がつけます。これが今の適正価格、フェアトレードです」  腹の前で肘を折って再度の一礼、彼女の表情は確かに笑っていたが目は真剣だった。 「承知致しました、事後はお任せを」  一行はやたらと静粛性が高いヘリに乗り込むと、付近を護衛の戦闘機が舞っていた。早速カタリナは島に連絡をすると直ぐに繋がった。 「カタリナ・ヴィスコンティです、イーリヤ将軍」 「ご無事でなによりです」 「ご助力頂きありがとうございました」 「礼はあいつらに言ってやってください。私は椅子に座っていただけなので」 「はい。武器のお代はドゥリー大尉に戴きました」 「そうですか」 「私はカタリナ・ヴィスコンティ、武器商人です。イーリヤ将軍、世界中どこの国や地域でも、我々WWWは必ずや閣下のご希望の商品を納めさせて頂きます」 「わかりました、覚えておきます」  ヘリは長躯して、ソマリア沖に浮かぶアメリカ軍空母に向かって行った。 「なんだよ、とんだ大安売りだなカタリナ」 「どうかしらね。あれで私は信用という武器商人の、いや、商人として一番大切なものを手に入れたからね」  満足げな顔に、そんなものかと小さく頷く。
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