209人が本棚に入れています
本棚に追加
義弟と武器商人
◇
フランス、シャルル・ド=ゴール空港。ひと仕事終えてロンドンに向かおうとしていたカタリナが何気なしにテレビに目を向けた。国際ニュース番組が流れている。AFP通信社、フランスが誇る企業が報道していた。
「先ほど入ったニュースです。シリアのIS支配地域、アシュシャーリットの空港付近で戦闘が行われた模様です。不明の武装集団が離陸を引き止められていた飛行機の乗客を連れ、いずこかへ離脱した様子です。今後続報が入り次第お伝えいたします」
画面が切り替わって、今日は何の記念日、などの通常番組になってしまった。臨時ニュースを偶然目に出来た、夜にでもまた内容を確認しようと心のどこかに留め置いて、今は忘れてしまおうと前を向く。
「一般航空機を無理やり着陸させて人質にしていた事件ですね」
どこかで見知っていたのか、イザベルが概要に少しだけ触れる。
「あーあれかぁ、参るよな、いきなりあんなとこに降ろされてもさぁ」
オランダ発、ドバイ行の航空機。国連関係の重要人物も乗っていたらしい。いつも軽口を叩くジャックも肩を竦めている。
「ふぅん、ジャックでも参るんだ」
「超神兵の俺でも空じゃ手も足も出なくてね。地上に足がついてればな、相手が万でも何とかするぜ?」
誇張なのか自信の塊なのか、人にはそれぞれ適性というものがある。だとしても万は言い過ぎだろうと思うけれども、逃げおおせる気がしないでもなかった。
「人質とって身代金要求してか、手っ取り早そうで面倒なのよねあれって」
最初のコメントを投稿しよう!