小学生の目

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ふと母親を見ると、私と同じように看護師を見ていた。「もしかして母さんも私と同じ思いで看護師さんを見ているのかな。」 母さんは印刷屋に勤めていた。手は器用なほうだから印刷屋に勤めたのだろう。でも決して裕福ではなかった。同級生の母親は本革の鞄をもっているのに母さんは布製の手提げ袋だった。ハンドバッグなんて冠婚葬祭の時にしか待つ事はない。普段は箱に入れてしまっている。そんな事を思いながら母親を見たせいか母親の目が輝いて見えた。 「やっぱり母さんも、あんなバッグが欲しいんだ。それなのに、私は病院通い。鞄を買うお金なんてないよね。」 本当に母親には悪いと思った。 せめて、父親が良い職業に就いていたらお金の苦労はなかったと思う。鞄だって買えたはずだ。 父親は仕事に飽きるタイプで、何回も仕事を変えた。だから安定した収入はなかった。
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