啓示その壱。

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 俺はまず(たもと)から夢叶の願いごとが映し出された短冊を、次に懐から(チケット)を一枚取り出した。  その二枚を、顔の前でぱちんと貼り合わせる。ちょうど人間が願いごとをするときと同じ合掌。俺が手を離すと、合わせた短冊と(チケット)は淡い光を放ちながら「人」の形になってふわりと浮き上がり、天井を通り抜けて天に昇っていく。  それを見届けた俺の視界の端で、夢叶の父親がおもむろにスマホを置き、床に置きっ放しのテストの答案に手を伸ばした。 「夢叶」  呼ばれた息子がドリルから目を上げる。 「すごいな、百点」  ボソッと投げられた一言に夢叶は目を見開き、花が咲いたような笑顔になった。 「うん!」 「風呂入って、夕飯買ってくるな。何食べたい?」 「オムライスのおにぎり!」  父親が微笑とともにうなずき、こたつというぬるま湯を出て立ち上がる。  大丈夫そうだな。もともとクズ親父ってわけでもなさそうだ。 「じゃあな、これで父ちゃん明日は仕事行けんだろ」  ホッとした俺は夢叶にひらひらと手を振り、散らかった家を後にした。
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