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啓示その弐。
世知辛いようだが、神が人間の願いを叶えるには、札が要る。俺たちは全知全能なんかじゃねぇ。願いの短冊と札を貼り合わせて、やっと力を貸してやれる。それも、ちょっと背中を押してやれる程度だ。普段0点ばっかのやつにノーベル科学賞やったりはできねぇ。
しかも、札の数には限りがあるんだ。一年にこんだけって量が決まってる。だから、できれば願いごとは正月とか、でなくても4月くらいまでにはした方がいい。特に、10月は絶対やめとけ。
10月、俺たち神は忙しい。全国からみんなが集まって、小難しい会議やら懇親会やら。一番の目玉は、来年もらえる札の配分調整だ。俺みたいな弱小はもちろん一枚でも多く欲しい。それにぶっちゃけ札の数が神社の格に影響するから、大手は大手で必死だ。つーわけで、10月は神無月、神、みんな多忙。覚えといて損はねぇぞ。
そんで、11月と12月、弱小神社は下手すると札もう使い切ってるからな。そこんとこ夜露死苦!
「あんたの氏子、昨日うちにお礼参りに来てくれたよ」
同じような形の建て売り住宅が並ぶ道端で、俺は女神に声をかけられた。隣町にある稲荷神社の神、狐舞喜だ。
「おぉ、わざわざサンキュー。探した?」
「あんたが本殿にいないのなんか、いつものことでしょ。こんなとこで何してんの? 仕事?」
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