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まじめに働いてるとかクソ格好悪いと思いつつ、俺は肩をすくめて夢叶の家を顎で示した。
「ここのガキがこないだお参りに来たから、ちょっと見に来ただけ」
「へぇ……うん、お父さんもちゃんと働いてるみたいだし、ちょっと精神弱ってるけど悪い気が流れてるわけじゃない。男の子も素直でいい子ね」
狐舞喜は俺と違ってよく働く。神としての年季も違う。だからって、ちらっと見ただけでそこまで分かんのかよ……
俺は内心舌を巻いた。
夢叶に札を使って半月。あれ以来姿を見ないから様子を見に来たんだが、父親の仮病は治ったらしく夢叶も元気そうだ。ただ、狐舞喜が言ったように父親の精神が弱いのがちょっと気になる。休日だからって昼間っから酒を飲み、息子を放ったらかしにしてこたつでいびきをかいている。
額から記憶を探ったから、俺は知ってる。父親は去年妻を亡くしてからおかしくなった。悲しみに暮れる暇もなく、仕事と家事と育児。それを一人でこなすのは負担が重過ぎたんだろう。真面目な性格が仇になり、心のバランスが崩れちまったらしい。
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