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「昨日お礼参りに来た一家ね、うちの町に引っ越したみたいよ」
木枯らしが狐舞喜の尻尾を揺らす。飛んできた枯葉がそこに一瞬引っかかって、そのまま風に流されていった。
「あぁ、じゃあ今度からそっちの氏子だな。たまーに見てやってくれ」
「うーん……そうだねぇ」
なんだろう、珍しく歯切れの悪い答えだ。
正直言って、俺の町にいるより、狐舞喜の氏子になった方が人間は百倍安心だと思う。でも、狐舞喜の神社も参拝客の減少、つまり収入減に悩んでるらしい。神社の規模はうちと同じくらいだが、今の神主が作法とかに厳しいせいか、参拝客が年々減ってるんだそうだ。
狐舞喜の話を聞いてると、うちの神主みたいに適当でもいいのかなって気にはなる。もうちょい掃除はしてくれよって、思ってはいるけどさ。
人間だって、不真面目なくらいでいいんだよな……
カップ酒を半分残し、こたつで寝こける夢叶の父親。その頬には、涙の跡が残っていた。
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