啓示その四。

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啓示その四。

 別に強要はしねぇけど、できればお礼参りには来いや。俺らだってさ、やっぱ、感謝されると嬉しいわけ。それにさ、単に見てぇわけよ。氏子が普通に楽しく暮らしてる、その姿をさ。 「わぁ、大きくなったね!」  合格祈願に来た夢叶を見て、狐舞喜が目を細める。真冬のベランダで震えてたあいつがもう高校受験なんて、人間の時間てのはほんとに早い。  あれから夢叶の父親は酒を断ち、父子二人で平和に暮らしている。 「だぁから、本気で合格したいんならもっとでかい神社に行けよ! うちは(チケット)少ねぇんだから!」 「そんなこと言っちゃって、ここに初詣に来てくれて嬉しいくせに」 「うるせぇんだよ、この女狐!」 『N高校に合格できますように』  短冊になった夢叶の願いに、俺は今年ゲットしたばかりの(チケット)をパチンと貼り合わせた。目の前で人の形になったそれが、音もなく空に昇っていく。 『この子が無事に生まれて、元気に育ちますように』  次の短冊に触れて、俺は本殿の格子から外を見た。 拝殿で巡査の妻が、大きなお腹をさすりながら、もう茶髪ボブじゃなくなった頭を下げている。その隣では、巡査によく似た上の子がまだ手を合わせていた。 『パパにもっとお休みください』  父親は正月から警備なんだろう、率直な願いに笑いがこぼれる。
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