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娘はその門前に立つ市の片隅で、窯の中に拾ってきた石を入れ火をくべておりました。
石を焼いて温石にし、参拝客に売っているのです。
冷え込む季節には温石を懐へ入れておくと随分とちがいます。しかし、小さな娘が一人でやるには割に合わない仕事にも思えます。
時折、耳たぶを挟む指は真っ赤に腫れています。箸で重い石を火の中から取り出すのは小さな手にはとても難しいのです。石にあらかじめ穴でも空けておけば火箸が通しやすくなるのですが、娘は拾ってきたなりの石を使っていました。それでなくても燃える火に素手を近付けていれば火傷をします。娘の手にはいくつもの水膨れができていました。
それを見ていた薬売りは、背負っていた薬箱から火傷に効く軟膏を取り出しました。
買えばかなりの値がする代物です。
「朝早くから感心なことだね」
薬売りが声をかけると、 娘はぺこりと頭を下げました。白い額はやや広く、まだあどけなさを残しておりますが、大きな目は意志の強さを秘め、きらきらと輝いています。
「すみません。今火を入れたところでまだ石が温まっていないんです」
「いや、急いでるわけでもない。待っていよう」
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