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“美しいとは役に立たないものである”
この骨董店"理玖堂"のオーナー、渋澤幸彦の1日を追って見ていると皆こう思うに違いない。
どうして手入れのわからない小品に買値以上にカネをかけて手入れするだろうか。
先日も不意にこの狭い店内で掃除中に地球儀の小品に渋澤の体がぶつかり、その真鍮の装飾一部がポロリと欠けてしまった。
渋澤はそういう時に反射的に
「ごめんなさい」
と慌てて謝る。かくもモノに対して敬意と誠意を払える日本人は果たしてどれだけいるのだろうか。
客足があろうとなかろうと、全く動かない小品達で埋め尽くされた一間の店内は絶えず渋澤のこだわりで満ち満ちている。
美しいものに囲まれる、日々触れ続けるというのは人間の心を豊かにするものだ。
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