煌めいた、筈

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渋澤の日々は小品達に一通りの手入れをした後、ノートPCを開き、Twitterとオークション情報のページを交互に閲覧する事に尽きる。 それはこの璃久堂の来客がSNSに上げた愛しの小品たちの写真を眺めてからイイネを押すかリツイートする事。そして新しい小品に出会うべく、延々とオークションサイトを見渡しながら次の出会いに想いを馳せる事。 最後にシーシャの煙を燻らせながら、小品達の輝きに添える音楽を流す。 The Millennium『BEGIN』今夜は熱帯夜につき、雨上がりの晴れ空のような雰囲気を演出する。 来客が無ければ終日この曲の繰り返しで閉店するし、あれば小さく頷き、何か呼び出されるまではずっとこのまま。 彼にとってここは職場である以上に居場所なのである。 悩み事といえば果たしてこの楽園が、いつまで銀行の融資を受け続けられるか、今年度の確定申告をどう乗り切るかであった。 相応の売上を出さねばならない。粗利の良い小品を揃える他ない。しかし渋澤幸彦には拭えぬ言い訳があった。そもそも、ここに並ぶ小品達の適正価格、本当の価値が皆目検討がつかないのだ。
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