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言い換えるとこれらが本物か、贋作かの見極めを付けずに蒐集している。
たとえば受付の左横の戸棚にある三角フラスコに入っているのはフランス産のコヨーテの歯。
これは現地に伝わる土産や開運道具、ましてや魔除けの類ではない。
ただただその製法に見惚れた。どこぞの平原で白骨化したコヨーテの頭蓋骨には歯茎と歯が一体化していた。そこからこの歯のみを剥がすために一つ一つ丁寧に彫刻のように歯だけを鮮やかに掘り起こさなければならない。誰がどのような目的でこれを行ったのかは皆検討が付かない。
だからこそ、この数奇で不可思議な制作工程に渋澤は強烈な好奇心と美しさを禁じ得なかった。
よって全24歯をイギリスで謎の露天商から10万でまるごと買い取った。
アンティーク。作られてから100年以上の年季が入った骨董品であれば渋澤は全部等しく扱う事にしている。
それらがコヨーテの歯のように工程に興味深さや掻き立てるストーリーがあれば尚のこと良い。
それが渋澤幸彦がいま考えうる美しさの確かな根拠だった。
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