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モノローグ
彼との出会いは、記憶を遡ること三年前の春。
私が大学一年の時。
写真サークルの飲み会で顔合わせした彼は、盛り上がっている大テーブルから移動して空いている私の隣に座った。
「アイツら泥酔して面倒だから。ちょっと避難してきた」
男性部員が殆どを占めるサークルで、一人でぽつんとおつまみを食べる私を見かねたのか、本当に面倒で逃げてきたのか表情からは読み取れない。
最初の自己紹介で、『大学三年の小さい鳥に遊ぶと書いて小鳥遊です』と名乗っていた。
全員の名前と顔がまだ一致しない中、彼の名字は珍しくて記憶に残っていた。
「乾杯してもいい?」
「あ、はい」
烏龍茶の入ったグラスをカチリと合わせて、乾杯と呟く。
彼のグラスに入った飲み物もまた、烏龍茶のようだった。
「お酒飲まないんですか?」
会話の糸口を見つけて疑問符を投げると、彼は気恥しそうに頬を掻いた。
「俺本当に下戸で飲めなくて。昔一回やらかしてそれきり」
それに、と黒縁眼鏡の奥の瞳が呆れたように遠くを見据える。
「アイツらすぐ悪酔いするから、俺みたいな奴が一人いないとなんかあったら面倒だし」
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