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積もった雪に足を取られて、転びそうになる。ギリギリのところで、手をついて起き上がれば雪の冷たさが手に残った。
はぁっと吐いた息は、白い煙になって空へと舞い上がる。空はきれいな紫色に染まっていた。
ブルッとポケットの中で震えたスマホを取り出して開く。確認すれば、秋からのメッセージだった。
「空がきれいな紫色だったよ」
その言葉に嬉しくなる。
私の見ている空と秋の見ている空は繋がっているんだ。空へとカメラを向けて私も紫色に染まった空の写真を撮る。
「こっちもきれいな紫色だったよ」
スマホをポケットに仕舞い込んでイヤホンを耳にはめて歩き出す。途中でスマホがまたポケットの中で震える。イヤホン越しに聞こえる着信音につい頬が緩む。イヤホンを操作して電話に出れば、秋の声が耳に飛び込んでくる。
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