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空虚な時間が多すぎて、何をしていいのかわからなかった。あまり目立つことも好きではないので、自ら積極的に大学で誰かに関わっていくこともない。
大学生活は、航平が引きこもりになるきっかけには十分だった。航平を知るものが近くにいたならば、そういう結果になっていなかったかもしれない。
航平は悩んでしまう。どちらかを選べば、どちらかは不幸になる。だが、選ばなければ問題は解決しない。
結局のところ、決断できない理由は、間違えてしまった時のことを考えてしまうからだ。数学のように答えが決まっていれば簡単なのに。どちらが獅獣を持つに値するのかなんて、航平にはわからなかった。
すると、悩んでいる航平を見兼ねたテンカが提案した。
「恐れながら、私でしたら、問題となっている獅獣を細切れに切り刻んで、存在を消してしまえばいいと思いますが」
冷然と言われると冗談には聞こえない。
航平がメメとヤルルの二人を窺うと、テンカの発案に血の気が引いて、引き攣った顔をしていた。それに眠っているシシグアも一瞬身体をビクッと動かしたような気もした。
「そ、それはちょっと、ダメかな」
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