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「そのシシグアは森に返してあげた方がいいと思う。もしかしたら、その子にも友達や家族がいるかもしれないし。もちろん、大きくなるまで保護してもいいけど、その時は二人だけじゃなくて、ちゃんと大人の人たちにも理解してもらってね」
『……』
「二人がシシグアのことを本当に想っているなら、シシグアがどうしたら一番幸せになれるのかを考えて上げて欲しいんだ」
引きこもりが何を偉そうに言っているのだろうか。
航平は自分のことすらろくに世話できていないのに、他人に思いやる気持ちを持てなんて何様なんだろうと自虐的になった。シシグアの気持ちというのも、航平の勝手な妄想に過ぎない。シシグアの幸せなんてわかるはずがない。
すると、静寂とした祠の中に低い笑い声が不意に響いた。その笑い声はテンカでも、メメでも、ヤルルでもなかった。もちろん、航平でもなかった。
航平の視線の先、シシグアのものだった。
シシグアはそれまで獣のように振舞っていたが、ゴロゴロと地をのたうち、笑っていた。その姿はなんだか人間味があった。
しばらくして、笑いが収まると、シシグアが口を開いた。
「いやぁ、面白いな!」
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