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シシグアの流暢な言葉に、航平は目を見張った。
「えっ⁉ 喋った⁉」
「そらそうだ。俺は獅獣。賢い存在だからな」
航平はテンカたちの言葉を理解している。それは神の使いであるテンカの力のおかげだ。彼女の言語の情報を共有しているからで、獅獣の鳴き声も、人の言葉として聞こえているのだと錯覚した。
ところが、テンカはかぶりを振った。
「どうやら元々、話ができるようです」
「そ、そうなんだ。けど、それならどうして、最初から喋らなかったの?」
航平が訊ねると、シシグアは顔をしかめた。
「最近の神のやり方に、俺たち、というか町の連中は不安になってたからな。横暴で極端な物言いに、な。だから、森の守り神である俺が、住人にお願いされたんだ。俺の森の中にある町だ。お願いされたら断れないからな。こうして一肌脱いだってわけだ」
「神を試したのですか?」
冷たい空気を纏ったテンカに、メメとヤルルが怯えるようにシシグアの後ろに移動した。シシグアは小柄であるものの、二人を守るように毅然としていた。
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