引きこもりの仕事

15/17
前へ
/17ページ
次へ
 シシグアの流暢(りゅうちょう)な言葉に、航平は目を見張った。 「えっ⁉ 喋った⁉」 「そらそうだ。俺は獅獣(しじゅう)。賢い存在だからな」  航平はテンカたちの言葉を理解している。それは神の使いであるテンカの力のおかげだ。彼女の言語の情報を共有しているからで、獅獣の鳴き声も、人の言葉として聞こえているのだと錯覚した。  ところが、テンカはかぶりを振った。 「どうやら元々、話ができるようです」 「そ、そうなんだ。けど、それならどうして、最初から喋らなかったの?」  航平が訊ねると、シシグアは顔をしかめた。 「最近の神のやり方に、俺たち、というか町の連中は不安になってたからな。横暴で極端な物言いに、な。だから、森の守り神である俺が、住人にお願いされたんだ。俺の森の中にある町だ。お願いされたら断れないからな。こうして一肌脱いだってわけだ」 「神を試したのですか?」  冷たい空気を纏ったテンカに、メメとヤルルが(おび)えるようにシシグアの後ろに移動した。シシグアは小柄であるものの、二人を守るように毅然(きぜん)としていた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加