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「そっか。それならよかった」
静寂とした祠の中で、テンカが呟くように言った。
「私は誰かの気持ちを理解することができません」
「それは、誰にもわからないと思うよ」
「神、であったとしてもですか?」
航平はそもそも神ではない。ただの引きこもりだ。だから自分の考えをそのまま口にした。
「神様にもできることと、出来ないことがあるんだと思うよ」
「それは神に相応しいのでしょうか?」
「本当に誰かの気持ちを理解できたら、すごいと思うけど、その人の気持ちはその人のものだから、理解したらいけない気がする。理解するよりも、寄り添うことの方が、お互い負担もなくていいのかもしれない」
「寄り添う……」
「問題も片付いたみたいだし、もう戻るね」
航平がここに来る前は、別の神がいたはずだ。その神がどんな神なのかわからなかったが、一つだけわかったことがあった。
きっと不器用だったのだろうと。
終わり
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