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だというのに、その女を前にしても航平は動じなかった。彼女と会うのはこれが初めてではない。確かに初対面の時はちょっと漏らしてまうぐらい怖がっていたが、それも今は慣れたものだ。
女は航平を見て、訝しそうに首を傾げた。
「どうかしましたか? 神様?」
「……」
航平は神ではない。ただの引きこもりだ。
彼女が言った「神様」というのも、当初は否定していたものの、彼女は航平のことを神と信じて疑わなかった。
それもこれも冷蔵庫の先が神を祀る祠に繋がってしまったのが発端で、興味本位で入り込んだ先でこの少女――テンカという神の使いと出会ってしまった。
どうして冷蔵庫の先がそうなってしまったのか、航平にはわからない。
しかし、これは現実だった。こうして薄暗い祠に来たのは一度や二度ではない。引きこもりになってからというもの、暇を持て余すと思っていたのは間違いだった。度々テンカに呼ばれ、航平は神として神の仕事をこなしていた。
航平は引きこもりではあるけれど、忙しかった。
「きょ、今日もまた?」
どもる航平に、テンカは淡々と言葉を続けた。
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