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「はい。今日もまた、迷えるものがこの祠を訪れています。どうか、神様のお力で彼らに手を差し伸べてください」
そう言うと、テンカは航平の前を歩いて行く。その後に続くと、曲がりくねった通路の先に小さな社殿が現れた。その社殿は簡素な造りで、木造の部屋に茣蓙のような敷物と中央に座布団があるだけだった。前方には壁がなく、簾がかけてあった。こんな洞窟内に誰が作ったのか気になるところではあったが、薄暗い洞窟内よりもいくらかマシだった。
航平はいつも通り座布団の上に座る。遠慮がちに正座すると、それを見てから、テンカが簾の先に視線を向けた。
「神様の御前です。控えなさい」
簾の先には三つの物影があった。簾の隙間からしか見えないので、詳細な姿はわからなかったが、着物を纏った小さな少女が二人と、その間によくわからない翼のようなものが生えた生物が伏せていた。その生物もまた小さい。
航平は俯いた少女二人に向けて、申し訳なさそうに声をかけた。
「あ、えっと。そんなに畏まらないで」
その言葉に続いてテンカが「面を上げなさい」と促した。
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